母方の祖母が亡くなった。
私はその時、彼の家に居たので、電話で知った。
母の声は意外にも冷静で、淡々と言葉を放った。
「おばあちゃん、亡くなったから。家帰っといで」
それは、
もうすぐご飯できるから降りてきて、とか
明日家誰もおらんから、よろしくね、とか
日常的な会話の返事と同じように、その時私は答えたと思う。
おばあちゃんは、朝の四時頃に息を引き取ったらしいが、私たちは日が昇ってから9時頃に、母の兄の家へ向かった。
おじいちゃんは、私が生まれて直ぐに亡くなったので、
おばあちゃんはずっと一人暮らしだった。
入院中にコロナにかかり、更に体力低下。
体がご飯を受け付けなくなった。
老衰。
80歳だった。
もっとおばあちゃんの家に遊びに行ってたら。
話を聞いてあげていれば。
忘れられるのが怖くても、逃げなければ。
もっと会いに行けてたら。
たくさん、たくさんの後悔を、頭の中いっぱいに浮かべた死だった。
少なくとも、私はそんなことを思っていた。
でも実際は、そんなこと無かったと思う。
母の兄嫁が、おばあちゃんのお世話をずっとしてくれていた。
母の兄の子供たち(私からすれば従兄弟)にも、病院での面会で沢山会わせていたらしい。
私も、亡くなる前に1度、面会に行った。
もう喋れなかったけど、目を合わせてくれたおばあちゃんは、とても可愛くて、それだけで嬉しかった。
お通夜とお葬式は、身内だけで行われた。
従兄弟は全部で5人。1番小さくて4さい。
「ねぇ、おばあちゃんなんで寝たフリしてるの?」
と言ったこの子の、
純粋な目から見える死を、
私は羨ましく思った。