星子(せいこ)

脳内再生を止めないで

2がつ11にちのごぜん4じ

 

母方の祖母が亡くなった。

 

 

私はその時、彼の家に居たので、電話で知った。

母の声は意外にも冷静で、淡々と言葉を放った。

 

「おばあちゃん、亡くなったから。家帰っといで」

 

それは、

もうすぐご飯できるから降りてきて、とか

明日家誰もおらんから、よろしくね、とか

 

日常的な会話の返事と同じように、その時私は答えたと思う。

 

 

おばあちゃんは、朝の四時頃に息を引き取ったらしいが、私たちは日が昇ってから9時頃に、母の兄の家へ向かった。

 

おじいちゃんは、私が生まれて直ぐに亡くなったので、

おばあちゃんはずっと一人暮らしだった。

 

鬱病認知症

入院中にコロナにかかり、更に体力低下。

体がご飯を受け付けなくなった。

 

老衰。

 

80歳だった。

 

 

もっとおばあちゃんの家に遊びに行ってたら。

話を聞いてあげていれば。

忘れられるのが怖くても、逃げなければ。

もっと会いに行けてたら。

 

 

たくさん、たくさんの後悔を、頭の中いっぱいに浮かべた死だった。

少なくとも、私はそんなことを思っていた。

 

でも実際は、そんなこと無かったと思う。

 

母の兄嫁が、おばあちゃんのお世話をずっとしてくれていた。

母の兄の子供たち(私からすれば従兄弟)にも、病院での面会で沢山会わせていたらしい。

 

私も、亡くなる前に1度、面会に行った。

もう喋れなかったけど、目を合わせてくれたおばあちゃんは、とても可愛くて、それだけで嬉しかった。

 

 

お通夜とお葬式は、身内だけで行われた。

 

従兄弟は全部で5人。1番小さくて4さい。

 

 

「ねぇ、おばあちゃんなんで寝たフリしてるの?」

 

と言ったこの子の、

純粋な目から見える死を、

私は羨ましく思った。